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備忘録とかに使えそうなノート

英文校正から学ぶ論文に使える英語,使う英語2

先日,以下のような同タイトルでの英語に関する記事を書かせていただきました.

lcstmarck.hatenablog.com

 

当時2,3人見てくれれば御の字と思って書いたのですが,想像以上に見られていただけでなく,何人かからありがたいお言葉をいただいたりしたので調子乗ってその2書きます.

 

 

相変わらず重箱の隅をつついて行きます.

細かい話なので「そんな細かいところ,気にする必要があるのか?」という疑問が浮かんでくるかもしれませんが,個人的には「論文を書く」という観点では気にする必要があると考えています.

例えば日常英会話やTwitter,チャットなどに関してはある程度のブロークンイングリッシュでも,失礼なことを言わなければ,相手に意図が伝わればなんとかなると思います.

しかし論文を書くことに関しては,公的な文書の感じでプロシーディングやネット上にそのまま残ります.

そして最も重要なのは,論文はacceptを受けなければ何も始まりません.残りません.

そのため査読者に対して稚拙な文章を送ってしまわないためにも,よりそれらしい英語にしてacceptしてもらえるような文章にするべきだと思います.

したがって,たまには重箱の隅をつついてでもよりよい文章作りに励むことは大事だと考えています.なお,自分が良い文章を書けるとは言ってない...というか書けないので一単語をいちいち調べたりしている...

 

今回も単語の意味の引用元に関してはLongman英英辞典(https://www.ldoceonline.com/)に大変お世話になった.

 

at the same time → simultaneously
at once → simultaneously

「同時に」「一度に」という意味で記述していたが,simultaneouslyと校正されていた.

simultaneous

things that are simultaneous happen at exactly the same time

辞書によってはsimultaneouslyに対して"at the same time"という意味が記述されているものあるため,意味自体に差異は見られないと思われる.ただ論文という観点では少々語彙レベルを上げた表現に,という意味で校正されたのではないかと考えている.

simultaneouslyについては,日常英会話に関しては基本的には使われず,むしろat the same timeを使う方が好まれる.

at once

a) immediately or without delay

b) together, at the same time

at onceに関してはもちろん今回の文脈ではb)の方であるが,語彙レベルの観点だけでなく,場合によってはa)の意味に誤解される恐れがあるため,simultaneouslyを使った方が無難かもしれない.

また余談だが,日常英会話の場合,a)のようにimmediatelyのニュアンスを伝えたかったら,right awayもしくはstraight sway(主にイギリス英語.straight offもアリ)を用いるようである.

straight away

(also straight off) British English spoken  immediately or without delay

 

 

avoid → circumvent 

これは「不要な処理を避ける」というような文脈で記述していた.

circumvent

 to avoid a problem or rule that restricts you, especially in a clever or dishonest way

こういう一概に良い意味と言えるか微妙な意味であったり,そのあとに記述されていた例文が,

The company opened an account abroad, in order to circumvent the tax laws. 

 であったりするが,「(うまいことやって)不要な処理を減らす,避ける」というような文脈には沿っていて,語彙レベルとしても上げてくれる校正であったと思う.

よって,この単語は単純になんでもavoidの代用として使える単語という訳ではないため使用には注意が必要ではあるものの,表現の幅が広がる一語ではなかろうか.

 

 

wrong → erroneous

「間違った」という意味で記述して校正いただいた単語.

erroneous

erroneous ideas or information are wrong and based on facts that are not correct

 日本語でいうとどちらも「間違っている」というニュアンスであるため,これらは可換であるかと言われると,そういうことではない.参考文献に記述されていた以下の例文の比較がとてもわかりやすかった.

I review the erroneous article.

I review the wrong article. 

前者は「間違いの含まれている記事のレビューをした」という意味.

後者は「そもそも全く関係ない違う記事のレビューをした」という意味になる.

同じ「間違った」という文,単語でもニュアンスには確かに違いがあるようなので,この例文を参考に考えるとよさそうである.

 

 

 

before → prior to

基本単語.「〜の前に」の意味で使用していたところ校正いただいた.

prior to

formal before 

辞典で調べても素晴らしくシンプルにbeforeと書かれている.強いて言えばformalと書かれているため論文のような堅めの文章で用いると良いのではなかろうかと思う.

では堅さ以外に違いは全くないのかと言われると,厳密にはそのようなことはないようである.

参考文献によると,文法レベルにはbeforeは後ろにSVと文が来ることが可能だが,prior toは取ることができない.名詞のみが後ろに来る場合は可換である.

もうひとつ違いがある.beforeの単語の意味には以下のような少し別の意味がある.

before 2

used to say that something happens where it can be watched by people

いわゆるin front ofの意味合いである.prior toには空間的な「前」は暗黙的に含まれていないため,そのような意味で使用することはできない.

ただ,空間的な「前」の意味でbeforeを使うこと自体あまり一般的でないため,特別気にすることではない.ここまで来ると完全に重箱の隅つつき状態になっている.

 

 

gives → yield

"X gives correct results"と書いていたところyieldに校正していただいた.単純に自分の語彙力が足りなくてちょうどいい単語が浮かばなかったため,直していただいて非常に助かった例の1つ.

yield

to produce a result, answer, or piece of information

意味の中にも記述されているくらいにはresultとの相性は良いようである.(確かに「結果をもたらす」というなあと...)

しかしながら論文ではこのyieldを用いると良いようだが,日常英会話では結果や利益(result, profit)をもたらすと言いたい時にはproduceを使うようである.

 

 

basic concept → essence

単純な語彙力不足案件.「基本的なコンセプト」というつもりでそのまま書き起こしたらessenceという「それだ!!」という校正をしていただいた.

essence

the most basic and important quality of something

余談で,essenceという単語で辞書引いたら以下の表現があることを知った.

something is of the essence

used to say that something is very important

ex)

Speed is of the essence when following up newspaper advertisements.

すごく大事であるという時に用いることができる表現のようである.初めて知った.

 

 

 show → describe

日本語で言う所の「示す」という意味で使用したが,describeに校正していただいた.

show

2) to provide facts or information that make it clear that something is true, that something exists, or that something has happened 

describe

to say what something or someone is like by giving details about them

この意味を調べて知ったが,showの言う「示す」の一つにはproveに値する単語であるようである.

今回校正していただいた文脈は,「この論文から〜という結果であることが示されている」 という旨の記述をしていた.

「示す」="show"と当時は短絡思考で記述していたが,確かにproveしている訳ではなく,こうであった,という事実を述べる意味合いで書きたかったのでdescribeに校正していただいてよかったと思う.

showは上記の2の意味の他にも「見せる」「(見せて)示す」などの,「見る(see)」に関する意味が中心で表記されていた.そしてdescribeを英和辞典で調べてみると「言葉で述べる」や「記述する」など書かれており,"to say"と書かれているだけあって「見る」とはまた違ったニュアンスの意味であるようである.

そのため,特別何かを証明している訳ではないため「この論文は〜であると示している」という解釈をするよりかは,「この論文には〜であることが記述されている」と解釈して記述した方が,より正確性が増すと考えた.

 

余談として,ではproveとshowに違いはあるのかと思って調べると,Mathematicsの世界ではshowとproveには特に違いを意識していないようであるが,Scienceの世界となるとproveは使われないようである.以下の意味を見るとニュアンス的にそうかもしれないと感じた.

prove

to show that something is true by providing facts, information etc

また記述によっては「proveするためにshowする」という旨のことも書かれていた.showの意味を改めて見ると確かに「証明するために事実や情報を出す」というように書かれている.

 

 

 

 

英文校正で受けた指摘をただ鵜呑みにするだけでなく,このように少しでも噛み砕いて見てみようとするとこれはこれで新しい知見が得られたりしてとても楽しい.その3かけたら良いなあ.